Gold Rush California/NZ

Gentaro Ishizuka

アラスカから始まったゴールドラッシュを巡る旅は、気づくとアメリカのカリフォルニア州のシエラネバダ山脈山域、ニュージランドのオタゴ州、南米のパタゴニア、フィンランドの北極圏域と世界中に広がっていた。金脈が発見されたそれらの場所に共通することは、19世紀の当時には、誰も見向きもしない土地であったということである。
それら文明から隔絶されたような「辺境」の場所には、100年以上の時が流れた後も、ポツンポツンと自然の景色の中にゴールドラッシュ時代の遺物が残されている。ある時は年代物のキャビンの残骸。ある時はより大きな動力を生み出すための巨大な歯車たち。「ガラクタ」とも言えるようなそんなモノたちは、使用されていた時の本来の意味を失って、今では自然に還ることのできないただの金属片としてそこにある。
歴史の知覚とは、時にとても奇妙なものである。ゴールドラッシュの遺物の前に立っていると、「現在」という自分の立っている場所が、緩やかに融解していくように感じる。重力の強い物体のそばでは、空間そのものが歪んでしまうように、ゴールドラッシュの残骸の周りでは、時間の感覚さえ歪んでしまっているようだった。そんな時、一枚一枚剥がせる皮のようものだと思っていた歴史自体は、まるで玉ねぎの芯のように現在という地表に貫通するように接続する。
「歴史の現在」という言葉があるかどうかはわからないが、ゴールドラッシュの作品群は、とある歴史の現在形ドキュメンタリーである。年代物の大型カメラを抱えながら、「ガラクタ」たちを探しすスタイルは、風変わりなドキュメントのスタイルと言えなくもないが、端から見ればただの時代錯誤者であるだろう。けれど僕には大きな蛇腹の暗箱を三脚に立てて、まるでカメラに半身を入り込むようにして記録を行うそのスタイルが、性に合っている。なぜならこの一個の身体は、未だこの世界を知るための重要な媒体であるはずだから。

(アーティスト・ステートメント)

KOTARO NUKAGAは7月11日(土)から8月29日(土)まで、写真家・石塚元太良の個展「Gold Rush California/NZ」を開催いたします。

石塚は10代の頃から世界を旅し、大判フィルムカメラで極地方のランドスケープを撮影してきました。ドキュメンタリーとアートの境界を横断するように、ランドスケープが詩情的なイメージを想起させる独自のスタイルは「コンセプチュアル・ドキュメンタリー」と評されています。

今回発表するテーマは〈ゴールドラッシュ〉。1848年、アメリカ・カリフォルニア州で始まった現象であり、一攫千金を狙う多くの人々が金脈を追って移住した結果、アメリカの経済や人口移動に大きな影響を及ぼします。その後、世界各地で辺境の地に富を求めて、人間が自然を開拓していきます。

石塚の探究は2011年、アラスカ全土に点在するゴールドラッシュの遺物を撮影したことに始まります。パイプラインや氷河という、ランドスケープの中で自ら選んだ被写体を追い続けるアラスカの地で石塚が発見したのは、訪れる街の多くがゴールドラッシュ由来であること、山道の多くは発掘者たちが山に入った時に拓かれた路であること、つまり現代のアラスカの下には「ゴールドラッシュ」という歴史的地層が横たわっていることでした。その後、発祥の地であるアメリカのカリフォルニア州、さらにはニュージーランドへと、異なる時と場所からのアプローチが続いています。今回は、2016年以降に撮影された〈ゴールドラッシュ〉シリーズからの新作発表となります。

雄大な山々や川というおよそ150年前とほとんど変わらないランドスケープとは対照的に、かつて栄えた街は廃墟となった建物に名残をとどめます。崩れかけた小屋、埃を被ったテーブルの上には食器がそのまま残され、当時そこにあった人間の営みが、時空を超えて目の前に立ち上がってきます。過去から現在へと至る時の流れは一本の主流だけではなく、歴史的な出来事の背景には、風土に根ざした一人一人の細やかな営みが存在します。重層性と時事性をもって歴史を紐解いた時に目の前に新たな景色が開ける感覚を、石塚は写真という手段で捉えようとしています。

また、8×10という大判フィルムカメラで撮影された石塚の写真は、わたしたちの視覚に揺さぶりをかけます。大判カメラの特性を生かした緻密なピント調整によって、実際にはあり得ない光景が写真の上で作り出されています。まるで「時空を歪ませる」ように撮られたそれらの写真は圧倒的な存在感と驚くべき深度で目前に迫り、観る者をイメージに没頭させます。それこそが、遠く離れた場所にまで大型の機材を抱え撮影に臨む石塚の重要な意図でもあります。

辺境地を切り開き、土地を掘り尽くした歴史の残像からは、夢や情熱の儚さやいつの時代も変わらぬ人間の業といった側面も見て取れます。現代に生きるわたしたちは、その痕跡に何を感じることができるのでしょうか。新たに開かれた視点で、100年前そして100年後という遥かなる時と遠い場所に思いを馳せるきっかけとなれば幸いです。

開催概要

展覧会名

Gold Rush California/NZ

アーティスト

会期

 2020年7月11日(土) 〜2020年8月29日(土)

開廊時間

12:00~18:00 (火〜土)

日月祝休廊

※開廊時間、入場制限等につきましては随時変更させて頂く可能性があります。

会場概要

[展覧会会場]

KOTARO NUKAGA

会場

140-0002 東京都品川区東品川 1-33-10 TERRADA Art Complex 3F

アクセス

東京臨海高速鉄道りんかい線「天王洲アイル駅」B 出口より徒歩約 8

東京モノレール羽田空港線「天王洲アイル駅」南口より徒歩約 10

京急本線「新馬場駅」北口より徒歩 8

品川駅港南口から都営バス( 91,98)「天王洲橋」下車徒歩 3

目黒駅から都営バス( 93)「天王洲橋」下車徒歩 3

Venue

  • KOTARO NUKAGA

Date

  • July 11 – August 29, 2020 

Open Hours

  • 12:00-18:00 (Tue - Sat)
  • *Closed on Sun, Mon and National Holidays