解き放たれたスピード
解き放たれたスピーチ
(はみ出し者)
展覧会のタイトルでもあるステファン・ブルッゲマンが放つ文字列に、わたしたちははっとする。現代生活のスピードは極限状態であり、ふとしたきっかけで疑問や抵抗が堰を切ったように溢れ出す。「スピード」と「スピーチ」という二つの語の頭韻が示すのは、社会への情報伝達方法における鋭い洞察であり、それは同時に抑圧でもある。
求められるのは、成熟した資本主義が築き上げた文化的、政治的、経済的な金字塔を一度まっさらな状態にすることだ。ハイスピードの時代はさらなる加速とともに突き進みながら、機能不全という宿命的な最期に向かっている。その破壊力は、現代システムとその生みの親である権力構造もろとも抹消することさえできる。
副題の「MISFITS(はみ出し者)」には、美術界のアウトサイダーであるアーティストたちの立ち位置が反映されている。これは、ミシェル・フーコーの「怪物こそが重要な形象であり、権力の審級と知の領域はこの形象を中心として動揺し、再組織化され」るとの思想にも同調する。
この展覧会は、資本主義が大惨事に陥る中での人間行動の社会学的記録だ。さらに言えば、政治というシステムの中でいかに生きるかの指南書でもあるのだ。
(展覧会ステートメント)